ワイン好きな象と猫

フランス生活の忘備録

ケバブ

レビューの続き

 

写真の説明をより練る必要があった。その点は研究発表と異なった。研究はデータから言えることを論理的に説明すればよい。つまり言語化が容易である。しかし写真は、写真に対して自分の思いと感覚を言葉にしないといけないのである。数段言語化が難しい。おそらく自問自答の様なプロセスが必要であると考えられる。(素人観)


カフェでの反省会では色んな事が話された。反省会といってもビールを飲みながらの和やかなものだったが

 

私の最後の仕事はPさんが誤って帰国日に予約したレビューのキャンセル及び、可能であれば別日程への変更であった。私もPさんもレビューの日程の変更に関しては全く期待していなかった。ダメでもともとというやつである。受付の女性の方に聞く、するとなんと日程を変更できることになった。さすがストライキ国鉄のダイヤが頻繁に変更する国である。そのへんの対応は慣れているのだろうか。

 

二つのレビューをキャンセルし、空いているレビュワーの中から最適な人を二人探した。一人目はスイスの方(スイスは山岳信仰があり、日本との共通の自然観をもっているのだとかだったと思う)、二人目は水に関する美術館の企画者とかなんとかでこれもPさんの作品に共通点があるということでフランスの方にした。

 

受付に行き変更を伝えるとなんと二人目のフランスの方はフランス語しか話せないという事で断念。急遽第三希望のパリの写真展に関わっているレビュワーの方に変更した。そしてこれが二日後の喜びの舞へとつながる。

 

私はその翌日リヨンへと帰らなければいけないため、これが最後となった。ほとんど役に立たなかったにも関わらずPさんから謝金を頂いた。私はクレカを失くしていたので嬉しい反面(ここでもまたこの話題)、その謝金に見合う働きが出来ていないと感じ、申し訳なかった。

 

私がアルルを去った日は写真家であるCさんが通訳をしてくれらしい。イスラエルからのレビュワーの方から良い返事をもらったとの事をPさんから聞き、私もほっとした。またおそらくこの日に写真家のCさんと写真の説明について入念に練ったのであろう。その次の日見せてもらった説明文は大幅に変わり、自分の思い入れを良い意味で省いた誰にとっても興味を持ってもらえるような文章になっていた。

 

アルルを出発した翌日、Pさんの最後のレビューの日だった。この日は三つもレビューがあるハードな日であった。リヨンを離れ新しい勤務地へと向かう電車の中でもPさんのことは気にかかっていた。そんなしていると乗り換え駅に着いた時予定していた乗り換え電車がストでキャンセルになり振り替えの電車まで二時間半待つことになった。電車を待っている間、その日Pさんの通訳している友人のSから連絡をもらった。

 

電車待ちで時間があったので大幅に変わった説明文を訳すことを申し出た。やっと変更部分を訳し終えたのはレビューの20分前くらいだった。本当に直前だった。私としては役に立てなかった謝礼の分少しでも役に立てればという思いだった。

 

レビューが終わってすぐSから連絡があった。レビューがとてもうまく行った事。パリのギャラリーを二つも紹介してくれることになったことなどが書かれていた。Fくんのアイスを食べながらの嬉しそうな様子の動画がレビューの成功具合を表していた。そのレビュワーの方は以前Pさんとレビューの日程変更で急遽選んだ第三希望の人だったのだ。縁がきっとあったんだろう。


作品が良いものであるのはもちろんだが、それを売り込む説明も作品が認められるにあたって必要であるのだと思った。(もちろん様々な場合があると思うが)

 

私の訳が役になったかどうか分からないが、チームの一員として最後も参加出来たようで嬉しかった。久々にチームとして何かを成し遂げたような気持ちを共有させてもらい、これから希望している職場の面接へと向かう自分自身の励みにもなった。自分も後の面接を上手く乗り越え良い報告がしたいと思った。

 

面接の結果は以前書いたとおりである。

 

思えばSは前日のパーティで、(それ以降の更なるアルル滞在の延長にもつながる(アルルで家に泊めてくれるという人を見つけ、)、Pさんは最後の最後でレビューが上手くいき、チームみんなに良い風が吹いていたのだと思う。

 

アルルに来て一番面白かったのはレビューのお手伝いだったかもしれない。


今回の経験は私自身のレビュー(論文発表)にも生きる所が多々あったと思う。こんな機会をくれたPさんとSに感謝したい。