ワイン好きな象と猫

フランス生活の忘備録

深夜のステーキ


いつも扉を開けるとそこにいたツバメはもう飛び立ってしまっていた。

 

昼と夜の営業の前、レストラン内のセラーの在庫を確認し職場の道路を挟んで向かいの地下セラーにワインを取りに行く。扉を開けた瞬間ワインセラーの湿気が全身を舐めるように体にあたる。入口から直ぐ下へと続く階段を降りるのだが、ちょうど階段を降りようとする時ちょうど目の前にツバメの巣があった。昼間は空の巣だが夜の営業前にセラーに行くと巣に帰ってきたツバメ親子4匹と目があった。階段には彼らの糞がびっしりとこびりついていた。

 

 

ツバメたちにしてみればいきなり目の前の扉があき、電気をつけられ、そこには自分の体よりも遥に大きい生物がいるのだ。びっくりさせたに違いない。しかし私にとっては営業中のある種の緊張感から一瞬解放させてくれる存在であった。

 

この一週間で一気に寒くなった。雨の日、曇りの日が続き、それまで太陽によって温められていた大地は蓄えた熱をすっかり失った。朝方になれば気温は10度を下回っている。石造りの家は日が昇ってもなかなか温まらず、太陽が出ている間は外に出た方が暖かいほどである。秋を通り越し、これから来る冬へと私の心を向かわせた。九月の半ばを過ぎると暖炉を焚くというこの地域では、これでも例年に比べればはるかに暖かいらしい。

 

9月も終わり、フランスに来てもう5月以上も経ってしまった。気が付けば帰国予定の来年2月への折り返し地点を過ぎていた。最近漫然と過ごしすぎているような気がする。一日一日をもっと大事にしよう。

 

この記事の下書きを書き始めてから投稿するまで二週間近く経ってしまった。
一旦終わったと思った夏はまた少し息を吹き返して、もう少しだけテラスで過ごしたいと思う時間をくれている。フランスでの残り短いこの季節をしっかり噛みしめたい。